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それでも飲まずにいられない
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労災金で酒を飲んでいると噂されている男がいる。
まとまった金が必要になると、指を切り落とすのだ。 先頃、三本目の指を失った。 事件の夜、酒場で、私は男に出会った。 「 どうしたんですか? 」 「 いやあ、旋盤で、指を切り落としちゃったあ、ハハハ・・・・ 」 男は、包帯でぐるぐる巻きされた左手をさすりながら、明るく笑った。 事故の悲惨さがまったく感じられなかった。 失った指は、右手の中指、左手の人差し指、そして今回の左手薬指だ。 何故か、小指は失っていない。 普通に考えると、一本、指を落としたら、二度と事故のないよう気をつけるのだが この男に、その法則は、あてはまらない。 今、私の隣で、事故の模様を事細かに説明している姿を見ていると、 反省している風ではない。まるで万馬券を当てた様な興奮が伝わってくる。 酔うにつれ、男の手元は覚束なくなり、盃からこぼれた酒が失った指を濡らす。 男が指を舐める。 口の中にスッと消えた指は、次のドラマの主人公なのだろうか? PR
哲学者、キルケゴールが命名した、「滞在喪失症」という病を持つ男がいる。
今、という時間が未来へ繋がって行かないのだ。 当然、酒を飲んでいた時の話は、翌日、存在しない。 グラス三杯目から駄目になる。 男は、看板屋の後継ぎ息子だったが、酒と女で、品川の家を失っていた。 始末が悪いことに、自分は「もてる」と思い込んでいて、電車に乗っても、 若い女の子は全員、自分を愛を持って見つめていると、確信している。 「 今日、まいったよ!朝の電車でさあ、若い女の子、皆んなオレのこと 見つめるんだよ、その愛にうるんだ視線が痛くって、痛くって、 疲れたよ、フ―ッ 」と、呟いている。 私は、つい静かに男の話を聞いてしまう。 「 近頃の若い娘、駄目だよなあ、品がなくって、なんたって「壇ふみ」だよ、 オレの嫁さんになる人は・・・・・・・」 「 夜は、ホクロが可愛いい、松原のぶえもいいねえハハハハ・・・・・・」 この男の話を聞いていると、頭痛がしてくるが、明日、存在しない話なので、 温かく笑ってしまう。 そして、酒にも色がついてくる。
この男と酒場で同席すると、翌日必ず激しい二日酔いになっている。
男に、薄れゆく記憶の中で、飲まされているのだ。 とにかく、人に酒を注ぐのが好きで、うまい。 相手のペースを考えず、どんどん注いでくる。 自分の酒を追加して注いでくるので始末が悪い。 「 まあ、そんなこと言わずに、ぐいっとやって下さいよ、ぐいっと・・・・ 」 こんな調子で、がんがん来る。 特に、人妻に対しては、狂った様に、注ぎまくる。当然、皆、 翌朝、地獄になる。 「 まあ、奥さん、やってよ、ちょっとだけ注ぐから、盃ほしてよ、奥さん、ねっ! 」 飲み干すまで許さない。 「 まあーた、そんな事いってえ、奥さん強いの知ってんだから、奥さん、 ほらっ、笑ってないで・・・・・・ 」 ほんのり酔っている人妻は、奥さん、奥さん、の言葉に乗せられて、 つい盃を出してしまう。 この男は、自分が飲むより、人に飲ませる量が圧倒的に多い。 人が飲んだ酒代を払って歩いている。 酒場では、人妻殺しと呼ばれている。 ちなみに、私の妻は、愚かにも、同じ手で三回もやられている。 はずかしい話だ!! |
プロフィール
HN:
村上かつみ
HP:
性別:
男性
職業:
イラストレーター
趣味:
酒
自己紹介:
酒ばっか飲んであまり
仕事しないイラストレ ーターなので、気が引 けています。 アイルランドへパブ百 軒めぐりの旅に出かけ たり、リスボンで、赤 ワインに抱かれエクス タシーに達したり、ブ ータンで稗・粟焼酎を 飲んで、大漁節を踊っ たり。と・・・ いつも、酒飲む口実を 考えながら暮らしてい る。さて、0,5ミリ のサインペン切れたの で、街へでるか!
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