忍者ブログ
それでも飲まずにいられない
[8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 労災金で酒を飲んでいると噂されている男がいる。

 まとまった金が必要になると、指を切り落とすのだ。

 先頃、三本目の指を失った。

 事件の夜、酒場で、私は男に出会った。

 「 どうしたんですか? 」

 「 いやあ、旋盤で、指を切り落としちゃったあ、ハハハ・・・・ 」

 男は、包帯でぐるぐる巻きされた左手をさすりながら、明るく笑った。

 事故の悲惨さがまったく感じられなかった。

 失った指は、右手の中指、左手の人差し指、そして今回の左手薬指だ。

 何故か、小指は失っていない。

 普通に考えると、一本、指を落としたら、二度と事故のないよう気をつけるのだが

 この男に、その法則は、あてはまらない。

 今、私の隣で、事故の模様を事細かに説明している姿を見ていると、

 反省している風ではない。まるで万馬券を当てた様な興奮が伝わってくる。

 酔うにつれ、男の手元は覚束なくなり、盃からこぼれた酒が失った指を濡らす。

 男が指を舐める。

 口の中にスッと消えた指は、次のドラマの主人公なのだろうか?
PR
 哲学者、キルケゴールが命名した、「滞在喪失症」という病を持つ男がいる。

 今、という時間が未来へ繋がって行かないのだ。

 当然、酒を飲んでいた時の話は、翌日、存在しない。

 グラス三杯目から駄目になる。

 男は、看板屋の後継ぎ息子だったが、酒と女で、品川の家を失っていた。

 始末が悪いことに、自分は「もてる」と思い込んでいて、電車に乗っても、

 若い女の子は全員、自分を愛を持って見つめていると、確信している。

 「 今日、まいったよ!朝の電車でさあ、若い女の子、皆んなオレのこと

  見つめるんだよ、その愛にうるんだ視線が痛くって、痛くって、

  疲れたよ、フ―ッ 」と、呟いている。

 私は、つい静かに男の話を聞いてしまう。

 「 近頃の若い娘、駄目だよなあ、品がなくって、なんたって「壇ふみ」だよ、

  オレの嫁さんになる人は・・・・・・・」

 「 夜は、ホクロが可愛いい、松原のぶえもいいねえハハハハ・・・・・・」

  この男の話を聞いていると、頭痛がしてくるが、明日、存在しない話なので、

  温かく笑ってしまう。

 そして、酒にも色がついてくる。

 
 この男と酒場で同席すると、翌日必ず激しい二日酔いになっている。

 男に、薄れゆく記憶の中で、飲まされているのだ。

 とにかく、人に酒を注ぐのが好きで、うまい。

 相手のペースを考えず、どんどん注いでくる。

 自分の酒を追加して注いでくるので始末が悪い。

 「 まあ、そんなこと言わずに、ぐいっとやって下さいよ、ぐいっと・・・・ 」

 こんな調子で、がんがん来る。

 特に、人妻に対しては、狂った様に、注ぎまくる。当然、皆、

 翌朝、地獄になる。

 「 まあ、奥さん、やってよ、ちょっとだけ注ぐから、盃ほしてよ、奥さん、ねっ! 」

 飲み干すまで許さない。

 「 まあーた、そんな事いってえ、奥さん強いの知ってんだから、奥さん、

  ほらっ、笑ってないで・・・・・・ 」

 ほんのり酔っている人妻は、奥さん、奥さん、の言葉に乗せられて、

 つい盃を出してしまう。

 この男は、自分が飲むより、人に飲ませる量が圧倒的に多い。

 人が飲んだ酒代を払って歩いている。

 酒場では、人妻殺しと呼ばれている。

 ちなみに、私の妻は、愚かにも、同じ手で三回もやられている。

 はずかしい話だ!!


忍者ブログ [PR]
プロフィール
HN:
村上かつみ
性別:
男性
職業:
 イラストレーター
趣味:
自己紹介:
酒ばっか飲んであまり
仕事しないイラストレ
ーターなので、気が引
けています。
アイルランドへパブ百
軒めぐりの旅に出かけ
たり、リスボンで、赤
ワインに抱かれエクス
タシーに達したり、ブ
ータンで稗・粟焼酎を
飲んで、大漁節を踊っ
たり。と・・・
いつも、酒飲む口実を
考えながら暮らしてい
る。さて、0,5ミリ
のサインペン切れたの
で、街へでるか!
最新コメント
[06/27 カツノリ]
[06/19 林]
[04/30 飲み屋のおやじ2世]
[04/27 M.O]
[04/24 rossa]