ことばが・・・・

　時に、幸福にも、どうにもならない酔っ払いに出会う事がある。

　ある日、テレビの相撲中継を見ながら騒いでいる男に出会った。

　大声で、ひとり言を、まくしたてている。

　言葉がはっきりしない。言葉を作る脳と筋肉がマヒしているのだ。

　必死に聞き取ろうとすると、

　「　バカヤロー、魁皇が負けた？それ見ろ、俺言ってんだろう、負けるって、なに、白鳳、

　　あれは強いんだ、ウイッ、負けたろっ、何、勝った？おかしいなあハハハ・・・・　」

　お客さん、いいから黙ってテレビ見てなよ、店の親父が注意する。

　「　あの野郎、気に入らねえ、何、勘定？払ってやろうじゃねえか、うるせえんだよ、

　　いちいち、野郎、バチあたるぞ、ヘへへ、何、三千円？払うよ、俺、今日、

　　金持ってんだから、ん―っ、俺は駄目か、そりゃないよ、そうだろっ、

　　わかってんだよ俺　・・・・・・・・・　」

　「　おいっ！　菊池、なんだよ、どうも、えーっお前は、訳のわからん奴だなあ・・・」

　「　あっ、社長、飲んでるうっ・・・・・・・・・・　」

　テレビは、七時のニュースを流していた。