お通夜があった。友人の父、90才の大往生である。
学生時代から、大変お世話になった人だったので、
我々の仲間達も10人ほど参列することになった。
町内の役員を歴任してきた男の通夜は、歴史を感じさせる、
大きな斎場で行われた。
焼香も終わり、柩の前に座っている友と目で挨拶を交わし
お清めの場所に移った。
町内の、お手伝いの小母さんに案内され、我々は、料理が豊かに盛り付けられた
奥のテーブルに陣どった。
お互い久し振りの顔合わせだ。
献杯のグラスが重なるにつれ、「友人の父の話」が「仲間話」に、化けて行く。
刺身あり、お寿司あり、てんぷら、煮物、飲み物はなんでも有る。
我々にとって、年に一度あるかないかの、夢の様な豪華絢爛たる宴だ。
盛り上がらない、はずがない!
「 今、お通夜なんだぞ! 」 と、心に言い聞かせるのだが、湧き上がる歓喜の勢いを
抑えることが出来ない。みんな、必死で喜びを抑えている。
昔話の「喜劇」が、場所もわきまえず、駆け巡る。
「 飲み放題! 喰い放題! 」 いいぞ! いいぞ! ドン、ドン、ドン!
お通夜が、クラス会になってゆく。笑い声がテーブルから漏れ始める。
誰が見ても、不埒な集団でしかない、恥知らずが喪服を着てカラス踊りをしている。
私達は、力強く、飲み続ける、もう、どうにも止まらない。
見ると、割烹着姿の、お手伝いの奥さん達が、柱の陰からジ―ッと、
白い目で睨んでいた。
仲間の一人が、二次会の場所探しに駈け出した。
二次会の席で、誰かが言った。「 次のお通夜が、待ちどうしいなあ! 」
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