忍者ブログ
それでも飲まずにいられない
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 男は、私と出会うたびに 「good holiday?」と聞く。

 二日酔いの頭の中は、とてつもなく 「bad」なのだが、しかたなく「fine!」と

 首をすくめて笑ってしまう。

 今夜は、彼の着てる皮のジャケットがやけに目につく。

 袖口を気にしながらギネスに、そっと口をつけた。

 少年が、やわらかく笑っている。

 父が、二日酔いの男をからかっている姿がおもしろいのか?

 父と二人だけでパブに居る事が楽しいのか?

 天使のような笑顔だった。

 私の子供達には無い笑顔だ。

 私も、又、彼のような父親ではない。

 二日酔いの頭の中がふくれた。

 少年の小さな手には、美しいパッケージに入ったチョコレートが

 握りしめられていた。

 幸せの香りが漂う、やわらかくなったチョコレートが。

 
PR
 「俺は、ゴルウェーのニクラスだ!」と、ゴルフ帰りの男が叫んだ。

 話の流れで、彼の似顔絵を描くことになった。

 出来上がった絵を見てニクラスは、セカンドショットをOBした様な顔をして、

 ギネスの香りがしみ込んだ天井を見上げた。

 たった一杯のギネスが報酬だったのに。
 私は、初めての店を自分の物にする為には、

 常連のボスに認知されることだと思っている。

 短い旅の中では大切な事のひとつだ。

 その為の努力は、少しも惜しまない。

 1925年生まれの小柄な老人が、この店のボスだった。

 ボスは、私に、ハンチング帽をとり静かに会釈してくれた。

 私は、あわてて立ち上がり頭を下げた。

 八十三才のボスは、三杯目のギネスを注文した。

 客達は皆、ボスへ暖かい視線を送る。

 会話さえボスを中心として演出される。

 言葉の端々に、ボスへ同意を求める型がある。

 この老人は、まるで神のようだった。

 ネクタイが輝いていた。グラスを持つ手が歴史だった。

 ボスが店に入って来た時、数少ない椅子が「さっ!」と、差し出された光景を

 見ていた私は、「なるほど、なるほど」と、一人うなずいてしまう。

 はたして、私は、ボスに認知されたかな?
 


忍者ブログ [PR]
プロフィール
HN:
村上かつみ
性別:
男性
職業:
 イラストレーター
趣味:
自己紹介:
酒ばっか飲んであまり
仕事しないイラストレ
ーターなので、気が引
けています。
アイルランドへパブ百
軒めぐりの旅に出かけ
たり、リスボンで、赤
ワインに抱かれエクス
タシーに達したり、ブ
ータンで稗・粟焼酎を
飲んで、大漁節を踊っ
たり。と・・・
いつも、酒飲む口実を
考えながら暮らしてい
る。さて、0,5ミリ
のサインペン切れたの
で、街へでるか!
最新コメント
[06/27 カツノリ]
[06/19 林]
[04/30 飲み屋のおやじ2世]
[04/27 M.O]
[04/24 rossa]