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それでも飲まずにいられない
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 パブは、9時を過ぎる頃から急激に混み合ってくる。

 この人たちは、いつたい何処に隠れていたのか?

 と、思うほど多くの人が、地鳴りを上げてやってくる。

 「 なんだ? なんだ? 」 「 これは? 」

 まるでラッシュの電車の中で酒を飲んでいる様なものだ。

 ほとんどの人が立ち飲みなので、虫達が羽根をこすり合わせて鳴く様に、

 体を、すり合わせてギネスを飲んでいる。

 すき間を見つけては、人とギネスが収納されてゆく。

 もう、顔を寄せ合わないと言葉が聞きとれない。

 まさに狂宴、カウンターの所へ注文しに行くにも長旅になってしまう。

 もう大変だ!

 シャンデリアの上では、妖精達が目をギョロギョロさせながら、

 からかう相手を探している。

 日本の首都は「ホンコン」だと言ってゆずらない、赤鼻のスーパーマーケットの

 おじさんがいる、「俺の日当は、ギネス10杯分だ!」と叫ぶ、フランス人の道路工事夫が

 7杯目のギネスを注文する。

 この店のボス、85歳の屈強な老人が、ジントニックのグラスを振りまわしながら

 客達を神のごとく言いくるめている。

 カウンターの隅では、アイルランド銀行の支店長が一人静かに自己崇拝的

 アイルランド魂を飲みこんでいる。

 バーテン達も、この酔っ払い達に酔わされて、カウンターの脇を

 ダジャレを飛ばして駆けまわる、壮観だ!

 もう妖精達にまかせるしかない。

 さあ飲め!さあ飲め!と、私の病気を刺激してくる。

 この時間が永遠に続くかの様な錯覚を感じてくる。

 そんな気持ちに襲われる頃、小柄なマスターが、鐘を鳴らしながら

 「レディス アンド ジェンッ」 「ラスト アンド ドリンク」と叫びながら

 店を歩き回りはじめた。

 「もう帰れ!」と言っているだけなのだが、その声は、

 ひとつの音楽になっていた。

 舞台の幕が下ろされる時の不可思議な哀しみが伝わってくる。

 パブという劇場の中で・・・・・・・

 酔った体に最後のギネスを流し込み、ヨロッと立ち上がった。

 雨の降りしきる、揺れ霞む街へ踏み出す。

 まるでオペラ座から出て行く様な気持ちで去って行く。

 いったい、今日は、何を見たのだろうか?

 音のない世界が、また、私の体を包み込む

 ギネスの香りを、蒔き散らしながら・・・・・・・・・・・・。
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プロフィール
HN:
村上かつみ
性別:
男性
職業:
 イラストレーター
趣味:
自己紹介:
酒ばっか飲んであまり
仕事しないイラストレ
ーターなので、気が引
けています。
アイルランドへパブ百
軒めぐりの旅に出かけ
たり、リスボンで、赤
ワインに抱かれエクス
タシーに達したり、ブ
ータンで稗・粟焼酎を
飲んで、大漁節を踊っ
たり。と・・・
いつも、酒飲む口実を
考えながら暮らしてい
る。さて、0,5ミリ
のサインペン切れたの
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