それでも飲まずにいられない
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ビルとビルの間に、うなぎの寝床の様な形をした、くずれかけた立ち飲み屋がある。
夕暮れに、まだ早い時だったが、仕事が早く終わったので立ち寄ってみた。 しばらくすると、すでに酔いが完成した男が、引き戸を重々しく開けて入って来た。 「 生ビールぅ ちょうだいっ!・・・・ウイッ・・・・フーッ・・・・・ 」 カウンターに上半身を乗せ、力なく飲み始めた。体を支えるのがやっとだ。 昼前から営業している店なので、日中、酩酊した客に出会う事はめずらしく無いの だが、これ程酔いが深まっている客を見る事は無かった。 突然、男は、「 俺は 46歳なのに ウイッ 55歳にみられた!くそっ! 」 ブツブツ呟き始めた。 店のスタッフは、年増の三人娘?。チーフは、浅黒く丸い顔したアンパン娘、サブは 下半身が異様に巨大化した小太り娘、サブのサブは、まな板に日本画風に描かれた 顔を持つ、こジャレな娘、この三人があたふたと切り盛りしていた。 男は、又、呟く 「 みんな可愛いねえ!! 」 カウンターに顔をすりつけながら、「 ヨシオちゃん 可愛いんだもんねぇ 」と。 「 ヨシオちゃん、46歳なんだから!! 」 左肩を落として叫ぶ。 ポケットから、ゴソゴソと500円玉を出した。 「 おかわりっ!! 」 「 追加はダメだよっ! もう終わり、 帰んなっ! 」 アンパン娘が叫ぶ。 そんな女達に向かって、まだ「 みんな可愛いねえ、 ウイッ・・・」と数回声をかける。 女達は、何の反応もしない、目すら合わそうとしない。 くずれかかる右肩を必死にささえながら「 みんな可愛いねえ! 」 と呟く。 三人娘にとって、こんなに可愛いと連発される事は、近頃無いと思うのだが。 「 ふん、 酔っ払いが・・・・・ 」 アンパン娘が足元に吐き捨てる。 男は、最後の言葉を絞り出す様に「 俺、甲斐性ないから、あきれて女房出てったよ・・」 「 俺、本当は、女房いたんだ・・・・・ウイッ・・・・・ 」 これまで一言も会話していなかった、まな板の浮世絵が、裏切られたかの様に、 「 なに、あんた女房いたの? 独身だと言ってたのに・・・・・・ !? 」 「 いたんだよっ・・・・・・フーッ・・・・・ 」 浮世絵が突然グラスを落とした、震えた指先がエプロンの下に隠れた。 PR |
プロフィール
HN:
村上かつみ
HP:
性別:
男性
職業:
イラストレーター
趣味:
酒
自己紹介:
酒ばっか飲んであまり
仕事しないイラストレ ーターなので、気が引 けています。 アイルランドへパブ百 軒めぐりの旅に出かけ たり、リスボンで、赤 ワインに抱かれエクス タシーに達したり、ブ ータンで稗・粟焼酎を 飲んで、大漁節を踊っ たり。と・・・ いつも、酒飲む口実を 考えながら暮らしてい る。さて、0,5ミリ のサインペン切れたの で、街へでるか!
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